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おとぎ話 ~2~ 

~30年後~

17歳になったツクシーヌはこのお城に勤め始め二年目を迎えていました。
元来の勤勉で実直な性格から、丁寧でありながら素早い仕事ぶりは定評で、誰にでも優しく親切な事からもみんなから好かれ可愛がられていました。

そんなある日、ツクシーヌは初めてツカサヌス王子の眠る部屋の清掃を任されました。
通常この部屋は使用人頭のタマンが任されているのですが、ぎっくり腰となり、急遽代役が回ってきたのです。

「いいかい、ツカサヌス王子の1m以内には決して近づいてはいけないよ。」

「はい!」

部屋に入る前に、ちゃんと忠告を受けていました。
しかし、なぜ1m以内に近づいてはいけないのかの説明をタマンは伝えていなかったのです。昔から仕える使用人にはその理由は有名な話で、それどころか国中が知っていました。しかし、それは30年余り昔の話。やがて時が経つにつれて王子に逢いに来る者もいなくなり、比例するように噂話をする者もいなくなっていきました。その為年若いツクシーヌ世代はその噂すら聞いた事がなかったのです。

部屋に入ってツクシーヌはベッドに眠る初めて見るツカサヌス王子の人間離れした人形のように美しいその姿に吸い込まれるように目を奪われてしまいました。
48歳と、王子と呼ぶにはとうが経っているような実年齢でありながら、30年にも及ぶ長期に渡り眠らされている王子の姿は、どうみても18~20歳そこそこにしか見えません。

ツクシーヌの意志に反し、一目見たその瞬間から抗おうにも抗えない、強力な磁石のようなものでツカサヌス王子の元に引き寄せられました。

ダメ!

ダメ!ダメ!!

ダメだよー!!

ベッドを目前にして、王子にドンドン近づく事にツクシーヌは怖くて目を閉じてしまいました。

ボフンッ!!


一体…何が起きたの?

ツクシーヌは恐る恐る閉じていた瞼を開けました。、長い睫毛に縁どられたアーモンドアイの青年と目があったのです。それも、これまで経験した事のない超が付く至近距離!そして、これまた感じた事のない感触をつくしの唇は感じていました。生暖かくふっくらとしたものに重なっていたのです。……それが何なのか理解すると、サーッと血の気が引いていくのがわかりました。
慌てて身を起こした正にその瞬間、背後から絶対零度の鋭い視線ににらまれているのが分かりました。

「何をしている!?」

急いでベッドから撥ね退けるように降り、ツクシーヌが振り返ると、そこに立っていたのは鬼の形相をしたこの城の城主であり、女王カエデンその人でした。

初めて間近で見る女王の迫力に、ツクシーヌは立っているのがやっとな程に狼狽しました。

してしまった事…イヤイヤ、決してこんな事自分の意志でやったつもりはなく、本当に身体が勝手に吸い寄せられたのです。
普段の自分ならこんな愚かな事、決してしないし、身体が勝手に動いた。だがそんないいわけを誰が信じてくれるだろうか。

ガタガタと小刻みに震えるツクシーヌにしびれを切らせたカエデンは、背後の警備兵に向かい顎でしゃくり合図を送りました。すぐさま警備兵二人がツクシーヌに歩み寄ると、両腕をがっしりと掴みあげました。そのまま何も発さず、ツクシーヌは黙って警備兵に従い連行されて地下牢に投獄されてしまいました。

これから自分はどんな罰を受けるのだろう…
事もあろうに仕える身でありながら、眠っている王子の寝込みを襲い、大切な唇を奪ってしまったのだ。
場合によっては死罪もありうるかもしれない。
家族や同僚にまで罰が及ばなければ良いのだけれど…

そういえば、ツカサヌス王子と目があったような気がしたけれど、…気のせいだったのかな。



*****
カエデン女王は、人払いをするとツカサヌス王子の元に歩み寄りました。
もしやバリアーが解けたのかもしれないという期待とともに…
しかし、かわらず強固なバリアーはツカサヌスに近づく事を許してくれません。

ではなぜあのメイドは…
あり得ない。あり得てたまるか。あんなピラミッドの最下級に属するメイドが頂点に立つ王族の司の運命の相手でなどあるわけがないではないか。

現に、ツカサヌス王子はキスをされたというのに目覚めてはいないのです。
しかし、これまで数えきれない女性達がツカサヌス王子に張られているバリアーの前に玉砕していった中、初めてバリアーの向こうに行き、ツカサヌス王子に触れる事が出来たのです。

その瞬間、ツクシーヌへの沙汰が決まりました。

『ツクシーヌ・マキーノ 島流しの刑に処する』
通常罪人は、広場に刑が貼りだされるのですが、今回は事が露呈しないよう隠密にその日の内に刑が執行されました。

誰にも見られないよう荷馬車に乗せられ、途中馬に乗り換え森を抜け、どこまでもどこまでも進むと、そこには海が広がっていました。

警備兵二人に連れられて、渡し守のせんどうする小さな木造船に乗せられてツクシーヌ達は出航しました。
浜辺から見えた一番近い大きな島だと思っていたツクシーヌの予想はあっさりと外れ、その島を通り過ぎると更に島が見えてきました。しかしその島でもなく、更に次の島でもなく、何島も通りすぎて、ツクシーヌが降ろされたのは国の最果ての地である薄気味悪い小さな無人島でした。

こんな場所に女一人を置いて去る事に警備兵達も後ろ髪引かれる想いでした。果たしてこんな所で生き残れるのだろうか……。だから、本来ならしてはいけない事だとわかっているのに、タマンからどうしてもと懇願されて預かった荷物をツクシーヌに持たせてあげる事にしました。そして、煙草を嗜む為に持ち歩いているマッチをポケットから取り出すと、ツクシーヌの手に握らせました。

かけてあげる言葉が二人には見つかりませんでした。
罪人なのだから容赦なく接して構わないはずなのに、あの現場を目撃していた二人は本当にこの刑を執行してしまってよかったのかという迷いがありました。そもそも本当に罪なのか?金持ちの令嬢ならWelcomeなのに、庶民だからといって…

「死ぬんじゃないぞ。」
「何があっても生きろ。」

きっと……長くは持たない。
それでもこれが二人の本心であり、願い。


目を合わせようとはせず、そそくさと再び船に乗り込んで行く警備兵に向かって、つくしは深々と頭を下げ続けました。そして、船が小さくなると、声の限り大きな声で叫びました。

「あたしは絶対に死なない!絶対生き残ってみせるんだから!!」




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- 4 Comments

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2018/02/07 (Wed) 20:34 | REPLY |   

きぃ  

スリー*¨*ーズさん

こんばんは。
鋭いですね!この後カエデンは色々起きる予定です。やっぱりいくら息子といえど、恋路を邪魔しちゃいけないですよね。
次回待ちに待った?ツカサヌスがメインの予定ですが、まだ書いていませんので、気長にお待ちいただけたら幸いです。

2018/02/08 (Thu) 18:21 | REPLY |   

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2018/05/09 (Wed) 10:20 | REPLY |   

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2018/05/11 (Fri) 12:48 | REPLY |   

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