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あなたがいたら ~23~ 

『レイプした。レイプした。レイプした。レイプした。……etc.』

尊の言葉とともに、日本で目にした司の痴態が楓の中で消化しきれず、リフレインしていた。

「楓、大丈夫か?」

焦点の定まらない妻からは同様が色濃く表れていた。心配し、尊は握ったままの左手はそのままに、右手で妻の腕を労わるように擦りながら呼び続けた。

「大丈夫なわけ…お願いです。冗談だとおっしゃって。」

妻の目は縋るようにジッと俺を見つめてきた。
その瞳から、冗談などではない事などわかっていて、ただ認めたくないのだろうとよくわかった。

「ずっと任せきりですまなかったな。」

妻の目には今にも零れ落ちそうな涙が浮かんでいた。
こんなに弱弱しい姿、初めて見た。
何とも儚げなその姿に、尊の胸は締め付けられた。
世間では鉄の女と揶揄されているが、ひとたびその鉄の鎧を脱いでしまえば、普通の女なのだ。
そしてその鎧を着させてしまったのは、尊自身だ。

嘘だと言ってやりたい。例えすぐバレル嘘でも今だけは…だがそれがバレてしまった時の事を考えると、彼女の為には決してならない事を尊自身よくわかっている。

「残念だよ。」

その言葉を合図に涙はハラハラと頬を伝い落ちた。それを見てられず隠すように、尊は楓を胸に閉じ込めた。

「辛いだろうけれど、このままでいいから何があったかを聞いてくれ。」

「嫌です。…グスン…あなた最初におっしゃったじゃないですか?きっと今聞いた方がわたくしの心の重荷も幾分かは軽くなって眠れると思うと。これのどこが…グスッ…益々辛くなっただけですわ。」

「あぁ確かに言った。だが楓も知っておかなければならないんだ。この困難を俺はおまえと共に乗り越えて行きたいんだ。」

初めて向き合ってくれた。
ずっと仕事一筋だった夫が、初めて夫らしく向き合ってくれていると楓は思った。
言葉を発っす代わりにコクンと頷いた。
尊はそれを合図に、タマから聞いた話を順を追って胸元に顔をうずめている楓に話して聞かせた。

詳細な話は耳を塞ぎたくなる様な話だった。
無邪気に笑い母親である自分を求めてくれていた幼い愛息の姿を思い浮かべては信じられないと思い、だがホテルでのあの姿を思い浮かべると、その愚行も事実だろうと思ってしまう。

「事もあろうに邸でだなんて…なんて愚かなのかしら。
それで牧野さんは?」

「タマが付き添って病院へ運んだ。俺もすぐに呼ばれ駆け付けたんだが、殴られた顔が痛々しくて…自分の息子ながら鬼畜すぎてゾッとした。」

自分の息子に対しゾッとするとは何事か?そう思うのに、楓も又尊と想いは同じだった。

「…かわいそうに。彼女には申し訳ない事をしたわね。
ところでいつの間に帰国なさったの?」

「半月前の君の出張中にな。まぁ、極秘だったから。」

「そう…だからどれだけ調べても消息が掴めなかったのね。」

「さすがだろ?」

「タマはあなたを頼ったのね。でもわたくしにも秘密になさるなんて!」

「あぁ。…悪かったよ。まぁ、おまえより付き合いが長いからな。」

尊はそう言ってはぐらかしたが、楓にはタマが自分を信用していないから尊を頼った事がわかりすぎる程にわかった。
これまでの経緯を考えればそれも当然だろう…
でも今は、夫の小さな優しい嘘が嬉しかった。

「クスッ…そういう事にしておくわね。」


「それに、道明寺の希望を守って欲しいと頼まれたからな。」

「希望…ですか?」

「あぁ、つくしの腹の中には司の赤ん坊がいる。」

楓は再び鈍器で殴られたような衝撃を受けた。
しかしそんな重大かつ深刻な事を、こともなげに、幸せそうに話す夫に苛立ちを覚えた。

「なんて事ッ!?どこが希望なんですか!!そんな…いくらなんでも牧野さんに申し訳ないわ。」

突如怒りを露わに憤慨する妻の反応に尊はおかしくなった。

「ハハッ俺も聞いた時は勘違いしたんだが、記憶を失う前に出来た子だそうだ。
何よりつくしが産みたいと言ってるし、タマも命に代えて守るそうだ。それを俺たちにどうこうなんて出来ないだろ?」

産みたい?守る?

「えっ!?…それはつまり…」

「君の孫が産まれるんだよ。」

孫…

「おまえは俺以上にわかってるだろ?司がどれだけ彼女を好きだったのか。
司の記憶が戻った時に、間違いなくあいつは自分を責めるだろう。いや、やった事実を考えたら責めなくてはならないんだが、責めて自暴自棄になりかねない。きっと救ってくれるのは彼女と産まれてくる赤ん坊だと思う。だから俺も、俺の持ちうる全ての力を使って守ってやりたいんだ。」

辛い目にあったというのに、その相手の子を産みたいといっているつくしに対し驚いたが、すぐに彼女はそういう人間だったと思い直し、彼女の愛情深さに感謝した。

「そうね…わたくしも仲間に入れて下さる?」

「あぁ、そう言ってくれるとわかってたよ。」

「それで牧野さんは?」

「明日紹介するよ。」

「楽しみね。
クスッあなたのおっしゃる通り、今夜聞けて良かったわ。」

「これで今夜はぐっすり眠れるだろ?」

「いいえ、今夜は興奮して眠れそうにないわ。」





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- 4 Comments

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2017/10/20 (Fri) 08:46 | REPLY |   

きぃ  

コメントありがとうございます。

よんよ*.さん

こんにちは。
待ってて下さったんですね‼ありがとうございます☺
不定期更新ですみませんが、これからも宜しくお願いします。

2017/10/20 (Fri) 09:32 | REPLY |   

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2018/01/16 (Tue) 16:17 | REPLY |   

きぃ  

Re: タイトルなし

お名前がなかったので、匿名さんへにさせていただきますね。
更新を楽しみにして下さりありがとうございます。
今週中に『あなたがいたら』か短編一話完結の『仮題 おとぎ話』どちらかを更新しようと思います。
『最愛』はTresorでの更新になってますので、そちらで呟きますね。
これからも宜しくお願いします。

2018/01/17 (Wed) 10:06 | REPLY |   

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