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あなたがいたら ~22~ 

予定外に日本へ行った為、楓のスケジュールはいつも以上に多忙を極めていた。
JFK国際空港へ到着すると、その足で延期していた商談を二件纏め、その後は本社に戻り重要な会議の為に缶詰となり、帰宅は未明となった。

邸へ戻ると執事長と、夜勤のメイド数名が出迎えてくれた。
そのまま執事長は楓の後をついて歩き、自室へ着くまでの数分の間に、執事長は不在にしていた間の報告をし、きっちり部屋の前に到着すると同時、報告を終えて頭を下げて楓がドアの向こうに消えていくのを見送った。

「ただいまもどりました。」

楓は尊を起こさないよう、声のトーンを落として帰宅を告げる挨拶をした。

「おかえり。楓」

返ってこないと思ってした挨拶だったというのに、不意打ちのように挨拶が返って来て楓は驚いた。
もうとっくに就寝していると思っていたが、予想に反して尊はソファーに深々と座り何やら本を読んでいた。

「あなたっ!こんな遅くまで起きてらっしゃるなんて…お体に障りますわ。」

心配げに自分を見つめる妻が愛おしい。
尊は妻である楓にしか見せない。
そして楓しか知らない微笑みを浮かべてみせた。

「楓の顔をみないと寝れなくてね。」

「……。」

楓はこの微笑みが好きだった。
好きだとは伝えた事がない。
それでも言い返してほしくないだろうタイミングで必ず尊はこうやって微笑むのだ。
確信犯だろう。それでも自分だけにしか見せないと知っているし、それを見る事が出来ると嬉しかった。

尊はハニカンデいる妻に微笑みながらも、本題を切り出さなくてはと口を開いた。

「それに、…大事な話がある。」

“大事な話”…これまでこんな事を言われた事があっただろうか?
この自室で切り出された事から、間違いなく仕事ではなくプライベートの話だろう。だが、これまで子供たちの事も全権をわたくしに与える事で口出ししない分、相談にも乗って下さらなかった。
司が暴れて手に負えなかった時も、刺されて生死を彷徨った時も、あなたはそばにいて下さらなかった。
勿論その時あなたがわたくし以上の責任とプレッシャーを抱えながら総帥として道明寺を引っ張って下さってた事は理解しすぎる程しています。だから、責めてはいないのです…。

一体何の話があるのですか?


「疲れているんです。明日では駄目ですか?」

「あぁ。きっと今聞いた方が楓の心の重荷も幾分かは軽くなって眠れると思うんだが。」

「わかりました。」

「何か飲むかい?」

「ではハーブティーを。」

尊がそばにあった電話をとり内線でハーブティを頼んだ。
運ばれてきたハーブティーはカモミールティーだ。リンゴのような甘い香りが優しい気持ちにさせてくれ、気持ちをやわらげてくれると言われている。今の楓の心情と、これから話す内容、そして深夜という時間を考え尊がこれをチョイスした。

五分程経った頃、メイドが煎れてくれたハーブティが届けられた。
コポコポとティーポットを傾けティーカップに注ぐと湯気と共にほんわりとした匂いがたちこめた。


「いい香り」

「あぁそうだな…」

二人はそれを一口口に含むと香りが鼻腔を抜け、温かいお茶が身体中をじんわりとあたためてくれているようにホッとした。

そして尊は重い口を開いた。


「牧野つくしを捜しているんだろ?」

「ええ。…」

知っていても不思議ではない。道明寺の力を使って捜索している以上尊の耳に入らないわけがない。ただ、その事を気にかけている事に楓は驚いた。

「楓は牧野さんを捜してどうするつもりなんだ?」

「分かりませんわ。…ただ、司の傍にいて欲しいのよ。」

「一体どういう風の吹き回しだ?俺の記憶する限りあんなにも嫌い遠ざけたがっていただろ?」

「そうね。…そうだったわ。…でも…」

「でもなんだ?」

「司があの娘じゃないと駄目なのよ。
認めたくありませんが、認めないといけない。……違うわね。本当は認めていたからこそ認めたくなかったんです。でもこのままでは司が手遅れになってしまう。

「全くおまえって人は、司の事だけなのか?牧野さんの気持ちは考えないのか?」

「わたくしは司の母親です。息子の事を一番に考えて何がいけないのかしら?それに牧野さんにとっても司の傍にいられる事は悪い話ではないと思うわ。」

フーっと尊は盛大にため息をついた。

「悪い話ではないか…だがそれはどうかな?」

「一体どういう意味ですか?傍にいてくれさえすれば何不自由ない生活を保障します。それのどこが悪いというの!?」

尊は病室でつくしを初めて見た時の事を思い出していた。

「楓は何も知らないんだな。
司が彼女にしでかしてしまった事を。」

楓は尊のその物言いにムッとした。少なくとも子供たちの事は尊よりは知っていると思っていたのだ。

「司が牧野さんの事だけ記憶喪失になった事は司のせいでは…」

尊は楓の話の腰を折った。

「そう、それは司のせいではない。寧ろあの事件は俺達のせいだろうな。」

「でしたら」

「レイプした。」

「え…何を言って…」

楓は尊の言葉を飲み込む事が出来なかった。
まだ日本でのあの痴態が記憶に新しく、鉄の女と言われる楓も精神的にダメージを受けていた。そんな中でこんな事を言われても実感もなく、はいそうですかと認められるようなことではなかった。
だが、まっすぐにこちらを見つめる尊の瞳があまりにも真剣で、反らしてはいけない。そう感じた。

そして、今度は楓の両手をしっかりと握りしめて、まっすぐとみつめながらもう一度告げた。

「司が、牧野つくしさんをレイプした。」



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- 6 Comments

kachi  

こんばんは!
お話の更新ありがとうございます😊

記憶を失ってボロボロの司は本当に可哀想だけど、こうやって両親が司のことを心配し、そしてつくしや孫のことを含めて真剣に考えてくれていたことって幸せなことですね。
司もそうだけど椿さんも強引だけど愛情豊かな人ですよね。
そんな姉弟のご両親なのだからきっと愛情があったと私も思います。かなり不器用で子供にまっすぐ伝わっていないのが残念ではありますが。

それにしても、司がつくしにレイプしたなんて事実、楓さんも相当ショックでしょうね。。。

続きも楽しみにしてます♪

2017/09/28 (Thu) 22:56 | REPLY |   

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管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/09/28 (Thu) 22:57 | REPLY |   

さとぴょん  

尊が、楓の両手をしっかり握りながら伝えるところがとてもよかったです。

「レイプした」という言葉に、衝撃を受ける楓

その事実だけでもびっくりなのに

子どもがいると知ったら、おったまげるでしょうね。

続き楽しみにしてます♡

2017/09/29 (Fri) 00:09 | REPLY |   

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このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/09/29 (Fri) 00:11 | REPLY |   

きぃ  

kac*.*さん

こんにちは。
この夫婦の話し合いはサラッと書くつもりだったんですが、折角尊が出ているので、楓の妻として、母としてにも触れて書いていきたいなと思ったんです。いつもと違う。でも楓っぽいなと思われるように書けるよう頑張ります。

2017/09/29 (Fri) 12:42 | REPLY |   

きぃ  

さとぴ*・*さん

こんにちは。
手を握るシーンは当初なかったんです。投稿ボタンをクリックしたらWi-Fiが切れているというアクシデントに見舞われ書き直すはめに……。結果このシーンを思いついたんで、返ってよかったのかもしれませんね。
現在妊娠を知った楓の反応を妄想中です。どうなるのか、もうちょっとお待ち下さい。

2017/09/29 (Fri) 12:47 | REPLY |   

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