永遠に…ともに…。 ~後編~ +その後の魂の行方~番外編~ 

類は進の言葉が一瞬理解できなかった。

数日前にみかけたばかりだというのに、司だけじゃなく牧野まで!?

「司の葬儀会場で牧野を見かけたんだけど。」

「そんなわけありません…あるわけないんです。姉は9月6日に亡くなりましたから。」

「6日!?」

「はい。俺も驚きました。ニュースで道明寺さんの訃報を知って…まさか同じ日に亡くなったなんてすごい驚きました。」

「そんな偶然あるわけ…」

「あるわけないですよね。…ホント…そうですよね。それにあれは偶然なんかじゃなかったと思います。」

「それどういう事?牧野はなんで亡くなったの?」

「心不全です。本当に突然でした。これからお話する事は類さんだからお話します。きっと類さんなら信じて下さると思うから。
俺、今は転勤で仙台に住んでて、あの日は出張でこっちに来ててここに泊まってたんです。俺はリビングで眠っていました。すると明け方何やら話し声が聞こえてきたんです。胸騒ぎっていうんでしょうか…ザワザワと胸のあたりがざわめいて、起きるには早い時間でしたが起きなければ後悔すると直感したんですよ。目を覚ましてみると、姉が誰もいないのにまるで誰かと会話してるように話していました。」



5時半に目覚めて朝食のお味噌汁を作っていると、照明を点けているはずの室内が急に暗くなった。
停電かと思ったと同時、いるはずのない、自分の人生で唯一愛した男が目の前に現れたのだ。
最後にあった10年前より歳を重ねているけれど、それがいい渋みを醸し出して相変わらずいい男である。
まだ自分は寝ぼけて夢でもみているのだろうか?でもそんなわけない。となるとこれは一体…

「何でここにいるのよ!?」

「最期にどうしてもおまえとの約束を果たしたくて来た」

「約束?」

「10年前、別れ際に交わしたろ?またねって。」

「うん。」

でもあれは……お互いこの手を離したら、きっともう二度と逢う事がないだろうとわかってたから。…だからさよならなんて言いたくなくて強がって『またね』って言っただけだよ。なのに…

「もうこれがおまえに逢えるマジで最期だから。…だから逢いに来た。」

「最期ってどういう意味?」

「俺、あとちょっとで死ぬんだ。」

その衝撃の告白とともに、それまではっきりと見えていた司の体がぼんやりとかすみ始めた。
今見ている事が常識ではあり得ないことだっていう事はつくしにもよくわかっていたが、直感でこれが夢でも幻想でもなくて現実に起きているのだと感じた。

その瞬間、つくしは自分でも驚くほど大胆に、そして素直になっていた。

「私も連れてって」

つくしは司を離すまいと、その消えそうな体に抱きつこうとしたが無情にも体は空をきり、そしてだんだんと遠ざかり始めた。

ダメ!ダメ!行かないで!これで最期なんて絶対にイヤッ!

必死に司を掴むべく両手を伸ばした。あとちょっと、あとちょっとで届く…でも司はそのつくしの手を苦悶に満ちた表情で見つめるだけで掴もうとはしてくれなかった。

なんで?なんでなのよ…つくしはそんな司に向って、あの別れからずっと想い続けてきた言葉をどうしても伝えたくて叫んだ。きっと同じ想いでいてくれるはずだから。

「あんたなら解るでしょ?ずっと…寂しかった。」

「おね…が…い」

ずっと意地っ張りだった彼女。
10年前の別れの時も無理して強がっているなんて解ってた。
あの時こんな風に素直になってくれてたら…

そう思ったら俺は彼女の手を掴み、引き寄せ、力いっぱい抱きしめてキスしてた。
この決断はつくしの家族や友人たちを悲しませるだろう。だが、俺にはつくしの気持ちが痛いくらいわかる。
俺もずっと寂しかったから。

俺の胸の中にすっぽりと収まったつくしがぎゅっと俺を抱きしめ返してくれてることがこんなにも幸せだなんてな…。

「やっと戻って来れた。ずっとね、ここが恋しかったの。」

「もう二度と離さねえぞ。」

そのまま俺を迎えに来た光に、つくしも共に包まれて彼女は予定外の死を遂げた。



***

「俺、姉が目の前で心臓止まったってのに何も出来ませんでした。
心肺蘇生をしなければいけない事はちゃんと理解していましたよ。でも…出来なかったんです。しちゃいけないような気がして。
例えしたとしても姉は戻って来てくれない。そう感じました。」

「進…」

類は進にかける言葉が見つからなかった。

「姉は最期の瞬間、少なくとも俺にはすごく幸せそうに見えました。それに、ぽわーっと光が見えて、消える瞬間、ほんの一瞬でしたが姉を抱きしめる道明寺さんが見えたんです。…ㇰㇲッ笑ってました。幸せだったんでしょうね。」

「それで、俺は何も出来ませんでした。でも、だんだんと冷静になって救急車を呼んで、死亡宣告を受けて、両親に連絡して、姉の死を悲しんでいる両親を見てたらこれでよかったのか?ってわかんなくなりました。俺が見たものは幻影だったんじゃないかと疑いかけた時、丁度道明寺さんの訃報を知ったんです。」

進の表情は泣いているのと笑っているのとまざったものだった。
心肺蘇生を試みなかった後悔と、これでよかったのだという狭間でこの先も悩み続ける事になるのかもしれない。
俺がその場にいたら、果たしてどうしていただろう。でもきっと、進と同じことをしたと思う。

「進、辛いな。でも俺はあの二人が笑ってたっていうならおまえの選択は間違ってなかったと思う。」




***

類は進から聞いた話を思い返していた。
他の人の話だったら笑い飛ばしていただろう。でもあの二人ならあり得ると思う。

それに、確かな事は離れた場所にいたはずの司とつくしの亡くなった時刻がとても近かった事だ。ただし司の場合、誰もいないところで息を引き取っていた為推定での時刻だったが、死斑も出ていなかった事から息を引き取って間もないと判断されていた。
きっとじゃなく、間違いなく二人は同じ時刻に息を引き取った。
類はそう確信した。

類はつくしのマンションを後にすると、急いで友人たちに連絡をとって道明寺邸を訪れた。
もう一人の親友の死を伝えるために。
随分と疎遠になってはいたが、みんなつくしの事が大好きだったから、進から聞いたあの朝二人に起きただろう事をみんなにも伝えたかった。


「類、みんなを集めてどうしたの?」

司の死により、その引継ぎで楓と椿は疲労困憊だった。
他のみんなも葬儀に参列するため何日も休んだ事から無理して今ここに集まっていた。

「類がどうしても集まって欲しいなんて珍しい事いうから来たけどよ、みんな多忙な身だし早いとこ話してくれ。」

「あぁ。今日は集まってくれてありがとう。まず単刀直入に言うけど、どうしてもこれを司の墓に一緒にいれて欲しくてそのお願いに来た。」

みんなが何?と伺う視線を類に向ける中、類は風呂敷包みをテーブルの上に置きその結び目をほどいた。

「それ、骨壺じゃない!」

「ああ。」

「おい、一体誰の骨だよ!?」

「これは牧野の骨だ。」

一瞬にして室内にピンと緊張が走った。

「牧野って、類悪い冗談はやめろよ!」

「そうですわ。その中に本当に骨が入っているのかは知りませんが、いくらなんでも先輩の名前を出すだなんて酷過ぎます!」



「こんな事冗談で言えるわけないだろ?牧野も亡くなったんだ。」

類の拳を握りしめて怒りに満ちた表情から、その場の全員がつくしの死が事実なのだと受け止めた。

だが、突然亡くなったと言われても到底信じられる事ではなかった。

「司が亡くなったあの日、牧野も亡くなったんだ。」

そうして類はみんなに進から聞いた全てを話して聞かせた。

最初こそ驚いた表情をみせていた全員が真剣に聞き、話し終えると類同様二人の最期の瞬間は進の妄想などではないだろうと確信し、そして一人で旅だったわけじゃない事に、少なからず救われた想いになった。



「司のお墓ね、先祖代々のお墓じゃないのよ。」

「何で?道明寺の当主は代々そこに眠っているはずだろ?」

「えぇそうね。でも司が生前作り終えてたのよ。遺言だから聞かないわけにいかないでしょ。しかもね、つくしちゃんが亡くなった時に、何としても分骨してもらって一緒にして欲しい。そこは二人だけで先祖になんて邪魔されたくないから頼むな。なんて書いてあったのよ。だいたいあいつ断りもなくつくしちゃんの名前まで墓石に掘って…。つくしちゃんが既婚者だったらって考えなかったのかしらね?ホントバカよ。
ㇰㇲ…でもね、なんか意地らしいじゃない。」

「えぇ、そうですね。」

「うん、司らしい。」

「にしても、スッゲー俺様だな。」

「結局分骨どころか骨全部一緒にしてやれるって事だろ?」

「ああ。あいつの高笑いが聞こえてくる気がするよ。」

その後二人の遺骨は司のたっての願い通り共に埋葬された。

道明寺司の名前の隣には、きちんと道明寺つくしと名前を刻まれて。

永遠に…ともに…。






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魂の行方 ~番外編~


★★★

「バカヤロー。俺以外と幸せになる道だってあったんだぞ?」

「バカで結構よ。あんたが、あんたじゃなきゃ幸せ感じなくさせたんだから責任とってもらわなくちゃ!」

魂だけとなった二人が彷徨っていると、目の前に真っ白なスーツを着て、七三分けにきっちりとわけた紳士風の男性が現れた。

「コホン。あなた方は先程亡くなりました。では成仏するまでの説明をさせて頂きます。
これからあなた方は三途の川を渡るために、まずこのトンネルをくぐって頂きます。これはあの世への入り口です。抜けた先に山がありますのでそこを越えて頂くと賽の河原に辿り着きます。三途の川を渡るコースは3コースありますが、どのコースになるかはあなたがたの俗世での行い次第で決まります。現地にいる鬼の指示に従って下さい。もしご親族があなたがたに渡し賃を持たせてくれた場合それで船を使って渡る事も可能です。
三途の川の先では大王様による浄土へ行くための審査が行われます。
では、私はこれで失礼します。」

要件だけいうと、男はあっという間に消えてしまった。

「よくわかんねえけどよ、ここでこのままいるわけにもいかねえし、トンネル入ってみっか。」

「そうだね。あの世なんて未知の世界だもんね。」

残された司とつくしは指示に従いトンネルを潜った。そこは真っ暗で、一人では心細かっただろう。気づいたら手を繋いで歩いていた。トンネルを抜けた先の山は予想以上に高く険しい道だった。しかし二人で歩いたら苦など感じずむしろ楽しくもあった。
そして三途の川へ着くと、多くの者が司とつくしのように川を渡る為に列を作って並んでいたのだ。
二人は家族が持たせてくれた六文銭の渡し賃を払い船に乗り、とうとう審査を受ける時がやって来た。


二人の前には見上げるほど大きな机があり、更に大きな大王様が鎮座している。
あまりにも大きくてド迫力のその顔は、先程から眉間にしわを寄せて明らかに不機嫌だ。

「全く勝手に死におって!牧野つくし、おまえはあと75年生きる予定だったというのにどうしてくれるんだ!!」

「なななななじゅうごねん~!?」

「そうだ。おまえは老人ホームに入所して、そこでのご長寿記録を作るはずだったのだ。」

えっ…そんな…こと?
そりゃあ、75年も生きたら115歳だから十分すごいけどさ。

「おまえ随分長生きするはずだったんだな。」

「道明寺司、おまえも勝手に生きた人間を道連れにするとは言語道断だ!」

「いってぇ!」

司の頭部を大王様が尺でぴしゃりと叩いたのだ。

「違います!私が無理やり付いてきたんです。」

「黙れ!まず牧野つくしの魂は即刻俗世に戻す事にする。」

その瞬間、つくしの頭頂部に浮かんでいた天使の輪がつくしがすっぽり収まるくらいに広がり、パーッとスポットライトのようにつくしを照らすとつくしの足元には穴が開いてスーッとつくしが落っこちて行った。

「えっ!?なにこれ!?」

「させるか!」

司は持ち前の瞬発力で落ちていくつくしの腕を掴むと、つくしとともに穴に落ちてしまった。

「地獄の果てまで追いかけるっていっただろ?」


ピュー………

あっという間に二人は見えなくなってしまった。落ちて行ったその穴を、大王秘書の男は顔面を蒼白させて見つめていた。

「大王様!大変でございます。いかがなさいましょうか!?」

「よい。丁度もう一組産まれる予定の夫婦がおるからな。」

「しかし…。」

「まぁ良いではないか。この事はわしとお主の秘密じゃぞ。」



***

「へっくしゅん」

その頃地上にいたあきらは身震いしてくしゃみをした。

「あら、風邪ですか?」

「いや、でもちょっと寒気がしたんだ。」

「まぁ大変…フフッ」

「あっためてくれるか?」

「ぁあっ…キャッ!」



そしてもう一人身震いしてくしゃみをしている男がいた。

「クシュンッ」

「風邪ですか?」

「いや、なんか…あったかい。」

「あら、大変!熱ですね?」

心配した妻が類のおでこに手を添える

「クスッ……」

「あれ?でもなさそうですわね。」

だろうね。

「うん、これから熱が出る程良いことしよっか?」



***
そして10か月後

「おぎゃー」

美作家に男の子が誕生した。
共に生きると書いて共生(ともき)と命名された。

「おんぎゃー」

花沢家に女の子が誕生した。
叶う愛と書いて叶愛(とあ)と命名された。




「今度こそ二人、俗世で添い遂げるのだぞ。」


永遠に…ともに。


~fin~

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10 Comments

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2017/09/06 (Wed) 20:02 | REPLY |   

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2017/09/06 (Wed) 22:48 | REPLY |   

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2017/09/06 (Wed) 23:40 | REPLY |   

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2017/09/07 (Thu) 00:49 | REPLY |   

きぃ  

スリー〇〇〇〇〇さん

よかったですか?思い付きで書き始めたお話だったのと、出だしの衝撃さから私自身反応が心配なお話だったのでホッとしています。
このお話を書いていた時は世界に入り込んでいたので、スリーさんからのコメントを読むまで地獄の果てまでおいかけるっていうあの名言をすっかり忘れてしまってましたΣ(゚д゚lll)ガーン
今回は地獄じゃなくて俗世に追いかけて行きましたね(笑)
本当は続編を書く予定はなかったんですが、気分をあげるために聞いていた曲のフレーズに『生まれ変わっても』というフレーズがあって、それを何度も聞いているうちに生まれ変わらせなくっちゃ!!っていう使命感のようなものが沸き、勢いで書いちゃったんですよね。勢いといってもあの世の事なんて何もわからないですし知識もないので一応調べました。そのへんの事は後であとがきに書きたいなって思いますので読んで頂けたら嬉しいです。
本来の閻魔様なら寿命を全うしなかったつくしを地獄行きにしたと思うのですが、私も読者さんもだれもそんな事望んでませんからね(笑)こんな裁きもありかなって思うんですよね。

さらなる番外編ですか?ん…生まれ変わった後のですよね?ぼんやりイメージはありますが名前が司とつくしじゃないので、どういう書き方をしたらいいのか難しそうですね。そのうち又ビビビッと来たら書きますね。

2017/09/07 (Thu) 11:57 | REPLY |   

きぃ  

kac〇〇さん

みなさん番外編の存在を予想以上に喜んで下さってるみたいで書いてよかったと感激しているところです。
輪廻先は、類につくしというのはすぐに決まったんですが、残りは総二郎かあきらと悩んだ時に、将来なんのしがらみもなく結ばれるにはあきらだな。ということからあきらにしちゃったんですが、おっしゃる通りあきらの家だったら、あたたかい家庭ですもんね。愛情たくさん受けて幸せになれるでしょうね。

10年前の別れをずっと後悔していたかというと、んんん…仕方がない。だから後悔より諦観という方が当てはまっているように思います。

目に見えない力なのかはわかりませんが、両親が山に山菜取りに行ったら、車両通行止めになり山に入れなかったらしいんです。ただ、両親の前の車両までは山に入れたのにおかしいなぁと思いながら引き返して帰宅すると、それから間もなくして祖父の危篤の連絡がきたんです。もしあのまま山に入れていたら死に目にあえなかったので我が家では虫の知らせだと信じています。

2017/09/07 (Thu) 12:37 | REPLY |   

きぃ  

ひなゆ〇さん

お久しぶりです。
『もう君以外愛せない』もちろん知っていますよ。本当に熱烈ですよね。外国人の恋文のような印象がありますが、司なら似合いますね。今度この曲を聴きながらお話を書いてみます!

私も司とつくしの幸せなお話が大好きです。
コメントありがとうございました♡

2017/09/07 (Thu) 12:50 | REPLY |   

きぃ  

まり〇んさん

ホント不思議なお話ですよね。私自身も思います(笑)
おまけの続編を喜んで頂けて私もうれしいです。当初は続編を書く予定にないままに書き始め、本編と続編でお話の雰囲気が変わってしまいましたが、続編によって司とつくしが幸せになり、ついでに類とあきらも幸せになり、そこから他のみんなにも幸せが広がれば…なんて密かに思っています。

子供の名前は悩みました。司かつくしどちらかだけだったら、そのまま名前をつけるのもありかもなんて思ったりもしましたが、両家ともに亡くなった友達の名前をつけるのはないかな?なんて事で、タイトルから『永遠(とわ)』と『ともに』からもじった名前にしようと考えて『叶愛』と『共生』にしました。たしかに生まれ変わりといっても名前を違うとピンときませんよね(笑)

2017/09/07 (Thu) 13:33 | REPLY |   

peko  

良かったぁ。うん、きいさん流石です。いつもぐっと心にきますね〜。本当にいつも有難うございます。朝晩寒くなってきました。風邪などひかれませんように(^^)

2017/09/08 (Fri) 21:08 | REPLY |   

きぃ  

pek〇さん

お返事が遅くなってしまいごめんなさい。
私こそ心にぐっときましたよ(*^_^*)ありがとうございます。

pek〇さんも体調崩されませんようご自愛下さい。

2017/09/12 (Tue) 11:41 | REPLY |   

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