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面影 ~1~ 

夏が終わり、これから巨峰の収穫という時期を前に92歳で老衰の為曾祖母が亡くなった.

曾祖父は第二次世界大戦で戦死しており、曾祖母は戦後七十年以上に渡り一人身を貫いてきた。そんな曾祖母は女で一つで息子である祖父を育て、祖父からは母と母の弟が生まれた。家を継いだ祖父と叔父一家と同居していたが、高齢だが身の回りの事も全て自分でこなし、忙しい農家の孫夫婦の為にと昼食は祖母と一緒に台所に立ち作っていたほど亡くなる直前まで元気でしっかりしていたのだ。
巨峰農家であり、巨峰が大好物でもある曾祖母にとっては、一番辛いタイミングだったかもしれない。
だが、一年で最も忙しい時期を目前に亡くなったのは、他人に迷惑をかける事を嫌う曾祖母らしいタイミングだったのかもしれない。

四十九日法要で親族総出で遺品整理をしていると、風呂敷包に包まれた古びた女性の裸婦画をつくしは発見した。その女性はつくしによく似ていた事と裏に志乃さんへと書かれていた事から祖母がモデルなのだとすぐにわかった。
つくしの曾祖父は先の第二次世界大戦で亡くなったが、美大に通っていたと聞いている。その曾祖父が描いたものだろう。

「なんか…」

「なに?」

「うん…あたしに似てるからさ、こうして見ると自分がモデルみたいで気恥ずかしいね。」

「そうねぇ。あんたはばあちゃん似だからねぇ。」

「ひいばあちゃんもさ、恥ずかしくて隠してたのかな?」

「どうかしらね。でも描いてもらってる時は恥ずかしさも感じない程きっと幸せだったんだろうね。」

「そうだね。きれいな絵だもん。」

「そうね。でも随分痛みが激しいわね。」



ここの隣の市に戦争で亡くなった画家や画家志望の美大生が遺した画を修復し展示している美術館がある。祖母は大切に保管していたようだが、所詮素人。長い月日には敵わなかったのだろう、傷みが目立つ。つくしは両親や親族たちと相談し、既に美術館に寄贈している絵同様にこの絵も寄贈する事にした。

そして一年後の10月、修復が完了し展示することになったと連絡を受けた。
つくしの一家は東京住まいの為、家族を代表し週末を利用して一人美術館へ足を運んだ。

そこは長野県上田市にある。どこ?と思う人もいるかもしれない。近年では大河ドラマの『真田丸』や、アニメ映画の『サマーウォーズ』の舞台となった地である。
観光客も、上田城の観光に来る者が殆どだ。
だが、北陸新幹線に乗り、上田駅で下車し、サマーウォーズでも登場していた別所線に乗り換え、別所温泉駅へ向かう電車を途中下車してしばし歩くと、付近の建物は築100年は超えているだろう古い建物が多い中、異彩を放つ近代的な建物が目を引く。
それが美術館だ。

その美術館は無言館という。
一体何を展示しているのか?その館名からは想像し難いが、展示されている物がどういった物なのかをを知ったらその館名に納得してしまうだろう。
展示されている物は全て、戦争で亡くなられた画家や美大生たちの作品なのだ。
中には戦争から生きて帰ってきたら仕上げるからと言い残し、戦地に赴き、そして帰って来る事が叶わなかった人たちの未完成のままの作品も多くある。
また、きっとこれが最後になるだろうと覚悟を決めて描いだだろう自画像や、懐かしい平和だった頃の故郷を想い描いた風景画、愛する妻や恋人を描いた絵画、たくさんの作品がそこには所蔵されている。そのどれからも、もっと描きたかった。もっと作りたかったと、そこを訪れる物たちに無念を訴えかけてくるのだ。戦後70年以上経た今なおそこからは、強い想いが感じられ、そしてこれからも訴え続けるのだろう。



祖母の絵の前にはマジマジと見つめる長身でチョココロネのような髪型が印象的な男性が立っていた。
その男性は美術館の彫像から飛び出てきたのかと見まごう程にきれいな男性だった。
つくしは真剣に見つめるその横顔に我知らず見とれていた。



*****

俺は見合いの為にニューヨークから一時帰国した。それにあわせてまとまった休暇をもぎ取れた事から、見合いまでの数日をこの時期紅葉が美しい軽井沢で過ごす事にした。
久しぶりにうまい松茸が食いたくなって、数年ぶりに馴染みの山小屋を訪れてみる事にした。車を走らせる事一時間あまり、山小屋まであとちょっとという所で途中の看板が目を惹いた。なぜだか無性に気になって、俺は引き寄せられるように山小屋に着く前に寄ってみる事にした。

そこに展示されていたものは戦争で亡くなった画家や画家の卵の作品だけで、一つ一つに説明書きがされている。
一通り目を通して行くと、目を惹いて離せなくなった絵が展示されていた。

「これはっ!」

なぜこれがここに!?
説明書きを読むと思った人物と作者が違った。だが俺の中のざわめくこの直感は…




☆☆☆
この『無言館』は実在する美術館です。
私も二度訪れた事がありますが、霊感のない私ですが、あそこへ行くと何か感じます。それは決して嫌なものではなく、お話の中でも書きましたが、展示されている作家さんたちの深い想いがそこに集い溢れているからだろうと思います。
信州へお越しの際は、是非足を運んで見て下さい。





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- 4 Comments

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2017/10/17 (Tue) 23:29 | REPLY |   

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2017/10/18 (Wed) 01:39 | REPLY |   

きぃ  

kac*.さん

こんにちは。
フフッ…つかつく最高♥me too.です
恋説書いてたんですが、途中で消えてしまって、秋になったら連載しようとおもっていたお話の第一話だけは書いてあったのでエイッと投稿しちゃいました。
無言館は、初めて行ったのが結婚間近の頃だったのですが、展示されている作品の殆どが、愛する人に向けた作品という事もあってか、その無念が心にすごく響いたんです。いつか訪れて頂けたら嬉しいです。

2017/10/18 (Wed) 12:19 | REPLY |   

きぃ  

まり*。・さん

こんにちは。
しっとりですか!?全然意識していませんでしたが、このあとしっとりを意識して書くようにしますね(笑)万が一違う方向にいってるとお気づきになりましたら、いつでも喝を引き戻して下さい!
遠い昔の縁がどんな縁だったのか?今後二人を大きく翻弄して行く予定です。お楽しみに(^^♪

2017/10/18 (Wed) 12:46 | REPLY |   

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