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王子様は旦那様 ~4~ 

パーティの翌日、いつもならすぐにアメリカへ戻るおふくろが、俺のオフィスへやって来た。理由は察しがついてる…。



「忙しい社長が、わざわざ孫の世話を焼く為に帰国を遅らせるとは思いませんでしたよ。」



「まあ、あなたからしたらそうでしょうね…。



これから言う事は、社長としてではなく司の母として、なのかの祖母としてよ。



わたくしはあなたとつくしさんの交際を反対し、あらゆる手を使って別れさせようとしたわね。」



「あぁ。思い出すだけで反吐がでんな。」



「まぁ、そうでしょうね。でも、わたくしはつくしさんはあなたには相応しくないと思いました。そう、その信念の元に反対したのよ。」



「だろうな…。」



「そして、わたしくしの思惑通りあなた達は別れた…。
もうホッとしたわ。



でも、その考えは間違ってました。その事に気が付くのに随分かかってしまいましたが、あなたの笑顔を奪った事に罪悪感を感じていた矢先、再びつくしさんと巡り逢ってくれた。」



「おふくろ…」



初めて聞くおふくろの懺悔…こんな風に思ってたなんてな…



「どうかあなたには、わたくしのような間違いは犯さないでほしいわ。」



そう言うと、後は用はないと言わんばかりに踵を返してスタスタとドアに向かって歩き出した。



「それって認めろって言いてぇのか!?」



司は楓の背中に向かって怒り交じりに投げつけたが、楓は振り返る事なく部屋を後にしてしまった。



一人きりになった執務室で、先程楓に言われた事を反芻し、自分に置き換えて問いかけた。



一体俺はどうしたらいいんだよ…。





*******




あのパーティの日以来、パパは挨拶はしてくれるけれど、話をする事を避けている。



でも、ママは違ってた。
いつもと変わらず接してくれる。だからママがどう思い考えているのかわからないけれど、ママだけはって事にとりあえず救われている。





「今年も行くのね?」





「うん。」





「そっか。じゃあ、お弁当一緒に作ろうかな♪」





「え?ママも作るの?」





「そうよ。私も久々に司とピクニックデートしようと思って。」





「へー。相変わらず仲良しで。」





「ふふっ♪」






パパとママが結婚したのを機に、ママの為にパパが専用のキッチンを作ったのだ。だだっぴろい豪華絢爛なコロニアル調の部屋ばかりだとママの気が休まらないだろうと、ママと私の為にこじんまりとした八畳の通称庶民ルームも作ってくれた。その部屋のインテリアはママと私が二人で暮らしていた時の物だ。冬はそこにこたつを敷いて鍋を食べるのが我が家のルールとなっていて、何年たってもパパはその空間にはミスマッチだけど、居心地が良いと言って、そこに集まっている。
でもね、パパはその部屋が居心地が良いんじゃなくて、そこにママや私たち兄弟が集まっているから居心地がいいんだって事、みんな知ってるよ。フフッ。だって、一人きりだとその部屋には寄り付かないもんね。






ママと一緒に作ったお弁当のメニューは、おにぎり、ママ特製卵焼き、エノキのベーコン巻き、から揚げ、色とりどりのミニトマトに、それからパパの嫌いなブロッコリー。それらを詰めて完成した、The 庶民!のお弁当。





このお弁当を持って、私は今年も恒例のあの場所へ行きます。





類君と初めて行ったあの年から、離れていた3年間を除いて毎年この菜の花が満開になるこの季節、私と類君は産んでくれた両親の思い出の地であり、私の名前の由来となった菜の花畑を訪れています。





東京の郊外にあるこの大きな公園は、緑豊かで季節によって色んな表情を見せてくれる。





そして、私と類君の定番コースは入口でレンタルサイクルを借りて園内のサイクリングロードを自転車で周ることだ。





そして、菜の花畑のある広場の近くの木陰でレジャーシートを敷いて、二人で昼寝を楽しむのだ。
強い日差しも、大きな木の枝によって木漏れ日へと変わり、居心地のいい空間を与えてくれる。






「初めて来た時にさ、ママがパパと結婚する前は私を自転車に乗せてくれてたって言ったら、フフッ類君が子供乗せのついたママチャリをレンタルしてくれて、私を乗せて漕いでくれたよねぇ。」





「あぁ。初めて漕いだよ、ママチャリ!クスクスッ懐かしいな。」





「うん。今思うとすっごくレアだったんだよね。まさか花沢物産の御曹司が子供乗せてママチャリ漕ぐなんて誰も想像できないと思うよ?」





「おまえの前じゃ、そんな肩書関係ないよ。」





「うん。」





そうだったね。いつだって類君は恥も外聞も捨てて私の為にしてくれたもん。





「でもさ、パパは絶対しないと思う。」





「そうかなぁ?司も家族の為なら喜んで乗るんじゃん?」





「そぅおぉ?……ん……クスッ……クスッ……ケラケラケラケラ……想像したら似合わなすぎッ!」





「アッハッハッハ……確かに……アッハッハッハ……!」





「ヤバイねぇ。涙出ちゃった。」





その後二人で大笑いした。
あのパーティー以来パパとはよそよそしくしてたから、パパの事でこんなに笑えるなんて思わなかったよ。







「ここはさ、都心から離れて緑も多いし、こうも緑に囲まれてると清々しく感じる。
だからさ、普段は乗らない自転車だって乗りたくなるし、なのかと一緒だから楽しいよ。」





「へへッ私も一緒。」





そんな事を話しながら、いつも通りお弁当を食べて、満腹になって昼寝を楽しむ…。





類君知ってた?



こうして隣にいられる事が、私にとって一番の幸せだってこと…。






なのか知ってる?



俺にとっておまえとこうして過ごす時間が、一番安らげる時間だってこと…。




これをさ、幸せっていうんだよな。







そんな二人を、離れた所からのぞくある一組の夫婦がいた。





「休日に突然デートに行こうなんて言い出したと思ったら、わざわざあれを見せに連れてきたのかよ!?大体何で止めなかった?何で二人きりで行かせたんだよ?」





視線の先にいる、仲睦まじく日向ぼっこを楽しむカップルを見つけて司の怒りのボルテージは急上昇している。





そんな夫の怒る姿など最早慣れっこな彼の妻であるつくしは、彼の怒りなどものともせずに話し続けた。





「私、なのかが類を好きなのずいぶん前から知ってたのよ。」





「おまッ!」





「でもね、憧れだけかもしれないとも思ってた。あの頃はまだなのかは小学生だったし…。

類もなのかをすごくかわいがってくれたでしょ。大事に思ってくれているのはわかっていたけどね、まさかそれが異性としてとは考えもしなかった。」




「あったりまえだろ?あいつらは親子ほども歳が離れてんだぞ!ありえねえだろうが!!」




「でも、見てよ。…なのかも類も幸せそうでしょ?

私ね、類ならなのかを幸せにしてくれると思う。




“糸”…昔西田さんに貰ったでしょ?」




「あぁ。でもそれがなんだってんだよ。」





何が言いたいのかわからず、俺は不機嫌を隠さずにいると、つくしが突然その歌を口ずさみ始めた。
しっかりと俺の瞳を見つめながら、その瞳は、ちゃんと聴け!という意思を俺に伝えてきた。





「♪~縦の糸はあなた 横の糸は私

逢うべき糸に 出逢えることを

人は 仕合わせ(幸せ)と呼びます~♪」




「貰った時さ、あんたしょっちゅう聴いてたでしょ?」





「…」





「この歌詞の意味解ってるでしょ?」





「…」





「逢うべき人に出逢えることが幸せならさ、幸せな人は逢うべき人に出逢えてるからってことじゃない?」






怒る司とは対照的に、穏やかに話すつくしの表情は二人の交際と結婚を応援したいと断言していた。





「おまえ…ホントにいいのかよ。
なのかはまだ子供なんだぞ?
これからもっとたくさんの出逢いだってあるだろ?」





そんな俺の言葉を聞いたつくしは、隣に座る俺の肩にコクンと頭を倒すと、左腕を俺の方へと伸ばし、その手は俺の心臓に優しく触れた。鼓動を確認するかのように、暫くそうしていた。





「つくし…?」





そんなつくしの様子を怪訝に思い、顔を覗き込むと、つくしは遠くを見つめていた。
やがて、俺の視線に気づくと、じっと俺を見つめて語りだした。俺を諭すように…





「何人出逢おうと、運命の相手じゃなきゃ意味ないよ。





大事なのはそのたった一人と出逢えるかだもん。





私とあんたみたいにさ…ね?」






俺とつくしの出逢いは、今のなのかとそう変わらない歳だった。





確かにあの時俺たちは強く愛し合ってたと断言できる。だが、現実はそんな惚れたはれたでハッピーエンドになるようなおとぎ話みたいに甘くはなかった。

結果的に俺たちは一度別れを選び、そして再び巡り逢い結ばれた。それは、俺とつくしが運命の相手だったからだろう。




本当はつくしを撮影するために持ってきた望遠レンズのカメラをズームして、二人の様子を覗き見ると、二人は菜の花畑を手をつないで散歩していた。




なのかはよく笑う笑顔の似合う娘だが、あんな笑顔は俺やつくし、きっと他の誰にも見せないんだろうな…類以外にはな…





そう思ったら、悔しいのに俺の指は夢中でシャッターを押していた。





この瞬間をどうしてもおさめておきたかった。





黄色の菜の花に囲まれ、好きな男と穏やかに微笑む娘の幸せな姿を…。







「俺らはボートでも乗って帰るか。」





そう言いながらサングラスをかけた司。
そう言った司の表情は、先程までの鬼の形相から一変して穏やかだった。



一瞬だけど見えちゃったよ。…あんたの目、うっすらと充血してたね…。





そんな夫の変化を感じ取り、つくしは司の背中をバシッと叩いて喝を入れた。





「イッテー!
おまえはもっと傷心の夫を労われよ?」





「ハイハイ。そうと決まれば出発よ!!」






なのか…よかったね。

進と春菜さんの力かな…









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