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王子様は旦那様 ~3~ 

俺はパーティ会場を後にしたその足で、メープルのバーにやってきた。
この後必ず呼び出されるだろうと見越しての行動だ。



そして、読み通り45分後にその人物から連絡が入った。




激しいバイブの振動が着信を類に教えた。

「今どこだ?」

「メイプルのバーにいる。」


それを聞くと司は一方的に電話を切ってしまった。



「フー相変わらずだなあいつは…。」

既に通話が切れてしまっている相手に向かって類は呟いた。



それから程なくして、バーの外がざわつきだした。



来たか。

来たのは、司一人ではなく、総二郎とあきら、そしてつくしも現れた。

眉間にしわを寄せ、手をスラックスの中に突っ込んで歩く姿からは怒りのオーラ全開で、3人も3歩後ろをついてきていた。


俺の前まで来て立ち止まると、無言のまま顎をしゃくった。その先は、いつものVIPルーム。


バーに来ていた客達がチラチラとただならぬ雰囲気を醸し出すこちらの様子を伺う中、俺たちは一言も発することなく奥の部屋へと向かった。



バタン!



と、全員が室内に入ると一触即発の事態に瞬時に陥った。



その様子に、司の左隣につくしが立ち、腕を回して捕獲すると、




「まずは座ろうよ!」

「お、おう。そうだな。」

「立ち話ってのもなんだしな。」


そう言いながら、司の左につくしが座り、右側にあきらと総二郎が、そして類は、司の正面に座った。


類の事を敵を見るかの如く睨みつけ、ただでさえ低いその声を、もっと低くしながら司が類に聞いた。




「で、さっきのはどういうつもりだ?」


その場に緊張が走る中、類は司をしっかりと見つめて断言した。



「俺はなのかと結婚したい。」


その言葉に、先程は居合わせなかった二人は驚いた。



「「まじかよ…」」


司と牧野から事前に聞いちゃいたけどよ…正直実際に聞くまで信じられなかった。


そんな俺と総二郎が驚いている横で、隣の司は先程以上に激昂していた。




「ざけんじゃねぇぞ!」

司の怒号が響き渡った。

この部屋は完全防音のため、外には漏れ聞こえてはいないだろうが、それでも司と類以外の3人はハラハラしていた。


そんな3人を余所に、獲物を狙うかのようにジッと睨みつける司と、狙われているのに顔いろ一つ変えずに佇む類。




「俺はふざけてなんかないし真剣だ。」

「おまえ、なのかが俺とつくしの娘だって知ってて手ぇだしたってのか?」

「まだ出してない。俺たちはプラトニックだ。」


……。


その言葉に、瞬時に顔を真っ赤にしたかと思うと、今度は青筋を浮かべてプルプルと震えだした。




「プ、プ、プ……プラトニックだぁ!?そんなん当たり前だー!!指一本触れてみろッぶっ殺す!!」


あきらと総二郎は顔を寄せ合い小声で二人で話し始めた。



「てか、指ならとっくに触れまくってるよな?」

「あぁ、それなら俺らもぶっ殺されてるよな?」


なんて、司の発言に、二人はコソコソと司に聞こえないように突っ込みつつ話していると…


ボカン!



イッテー!



あきらはあまりの激痛に痛む頭を押さえると、左から振り返りたくないほど恐ろしい視線を感じた。



バくバクバク…心臓の音が警笛のようになりやがる!
ヤべー…背中に冷や汗が…



恐る恐るちらりと視線の先を向いてみると、予想通り、殺し屋みてえな面した司が俺を睨みつけていた。



てか、何で俺だけなんだよ!?総二郎もだろうがぁー!!



いつもながらのこの理不尽に文句を言いたいのに、とてもじゃねえけどいえねぇな。と諦めつつ、俺は無言で視線をそらし、代わりに総二郎を睨みつけた。すると、瞳はスマン!って言ってるような気もするけどな、絶対セーフってほっとしてんだろ?クソー!!




自らの不運を嘆きつつ、俺は気を取り直して正面類の方を向いた。

「なぁ、類。おまえがなのかを可愛がってるのは俺も良く知ってる。

その愛情は娘に対してのようなもんじゃないのか?」



「俺も最初はそうなんじゃないかと思ったよ。

でも、この3年間離れてみてわかったんだ。



俺はあいつがいないとダメなんだって。」

「しっかしなぁー、おまえ自分の歳考えろよ?あいつは今日16になったまだまだガキなんだぞ?」

「歳なんて関係ないだろ。」

「関係ねぇわけねぇだろうが。俺が司の立場でも反対するぞ。」

「まぁな。俺も娘が類となんて聞かされたら絶対反対する。」

「つーか、あきらの娘はまだ8歳だろ…ありえなさすぎ。」

「はぁ?…んん…まぁいい…それよりおまえ今じゃ花沢の専務なんだし自分の立場考えろよ?間違ったら淫行だって騒がれかねねぇぞ?」

「だから、俺たちはプラトニックだって言っただろ!それに、真剣だからこそ手を出してないし、結婚したいんだ。」



それまでずっと黙って聞いていたつくしが、重い口を開いて類に尋ねた。



「ねぇ、類。なのかのどこを好きになったの?類ならこれまでたくさんの縁談があって、その中には素敵な方もいたでしょ?」

「うん。縁談なら憶えてない位あった。

そのうちの何人かとは付き合ってみたけどさ、どれも生涯共にするっていうのはピンとこなかったんだ。


でもさ、なのかとは一緒にいて心地いいんだ…。
空気みたいっていうのかな…。
この3年、離れてみてあいつが俺の中でどんだけ大きい存在がイヤってほどわかったんだよ。



俺はこの先、生涯を共にするならなのか以外考えらない。」



……。




「司、牧野、なのかと結婚させてほしい。」


そう真摯になのかへの想いを告白し、頭を下げる類の姿に全員が驚いた。
勿論司も…そんな類の姿初めてみた。




「る…い…」


つくしは、整理しきれない想いをどう言葉にして伝えればいいのか迷った。


その時、



バンッ!!




激しい打撃音が部屋に響き、見ると、テーブルにはヒビが入っていた。

「俺は認めねぇぞ。

いいか、金輪際なのかに会うんじゃねぇ!!」


そう吐き捨てると、司は立ち上がりドアに向かって歩き出した。
その様子に慌ててつくしも立ち上がりドアに向かって駆け出した。




「待って司!」


そして、振り返ると類に向かって


「類の気持ちはよくわかった。
でも、私もあまりにも驚いちゃって…」




「うん。」

「ちょっと時間頂戴。
二人も、巻き込んじゃってごめんね!」


そう言って司を追いかけてつくしは足早に去って行った。



二人が去った後のVIPルーム


類がこんなに自らの気持ちを語るのを、長い付き合いだってのに俺は初めて見た。
あきらの方を見ると、あきらもそんな表情してるから、俺と同じように感じてんだろうな…。



「類…マジなんだな?」

「あぁ。」

「そっか。」


ガキの頃は静の事ばっか追いかけて、自分の感情を表に出さない奴だったのに、高校時代に牧野に出逢って感情を出せるように変わって行った。
俺もあきらも類が牧野を好きだったって事を知ってる。
正直牧野はどちらとでも幸せになったんじゃないかと思わなくもねぇんだけど…。
司は牧野とじゃなきゃ幸せになれなかっただろうし、これでよかったと思ってる。けどな、ずっと類の幸せがどこにあるのかだけが気がかりだった…。
このまま独身なのかもしんねぇな。なんて思ってもいたけどよ…


そうか…なのかかよ。






「いいんじゃね?」


思わぬ総二郎の発言に、あきらは慌てて総二郎を制止しようとした。



「おい!総二郎!」


しかし総二郎の視線はあきらへの同調を求めていた。



「俺は応援すっぞ!」




あきらも又、類にも幸せになって欲しい。
だがそう易々と応援するとは言えるわけがない。
類の事は勿論大事だ。ガキの頃からのマブダチだからな。だがそれは司も同じだ。
そして牧野もなのかもまた…大事なんだよ。



「なぁ類、なのかが牧野と似てるからか?」



「二人は似てないよ。」



「は?似てっだろ。」



「んん…仕草やパーツは似てるところもあるかな。…出逢ってすぐの頃は似てるところをみつけると嬉しくなったし。



牧野には一生懸命なあいつを見てると何かしてあげたい。って思って、気づいたら目で追ってた。それを俺は恋だと思ってた。」




「それも立派な恋の形だろ?」




「んん…でもさ、なのかには違うんだよ。
最初の頃こそまだ5歳だったし、稜が産まれて司と牧野がそばにいてやれない時は俺がそばにいて守ってあげたいって思ってたんだ。それこそ父親のような心境だったと思う。



それがさ、一緒にいるとあったかい気持ちになって、あいつと過ごす時間が心地よくなってた。



3年前、俺がイタリアに行く前になのかに告白されたんだ。
でもあいつはまだ13歳だったし、あいつにはあいつのこれからの未来があるし、俺との小さな世界だけで決めて欲しくなかったし、俺自身あの頃はあいつへの想いがよくわからなかった。だから3年後のなのかのバースデーパーティの時、まだ気持ちが変わってなかったら結婚しよう。って伝えたんだ。」



「マジかよ。」



「俺がイタリアへ行って体調崩しがちになったの知ってるだろ?」



「ああ、そういやな。」



「あれさ、暇さえあったらなのかが恋しくて仕事詰め込み過ぎたんだよ。ハハッ



イタリアにいてもたまにあいつの噂が耳に入ってきてさ、それ聞く度にもっと頑張んなきゃなって励まされてさ、なんとか3年持ちこたえたんだよ。



俺の方がさ、あいつを必要としてたんだよ。離れてたこの3年で嫌って程気づかされた…



俺が生きてく上でなのかが必要だってさ。」




「「類…」」





あきらは類となのかのこれまでを思い返してみると、確かになのかと一緒にいる時の類は笑ってて、幸せそうだった…



類がなのかを不幸にするとは考えられない。なら…





「…わかった。俺も応援する!」




「クスクスッ…サンキュ!」




「それ、司に殴られたのか?」



そう言ってあきらは類の口元を見た。
少し切れたその口端はあきらかに殴られたとわかる傷だった。




「あぁ。でももっと殴られるのを覚悟してたし、殴られて済むなら好きなだけ殴ればいいと思ってたよ。」


「スゲーな。俺は一発だって勘弁だわ。どうだったんだ?あいつのパンチは?」



「重かった。

すっげー重かった。あいつのなのかへの想いがよく伝わってきた。」


「はっは…そっか…。いつかは人を殺しちまうんじゃないかと思った事もあったけどよ、立派に人の親になってたんだな。」



「あぁ…。」




「うまくいったらあいつが義理の父ちゃんかよ。 」

「でも、牧野が母ちゃんならいいよ。」

「はぁ!?俺はどっちも勘弁だわ。 」

「あぁ、俺もだ。もれなくあの二人と親戚なんてよ。」

「『お義理さん』とか呼んじゃうのかよ。」

「想像したら笑えるな。」

「「「ゲラゲラゲラ」」」

「つーか、いい加減たのもうぜ?」

「あぁ、だなっ!」




その後3人は、思い思いに司との事を語り合って夜を明かした。








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