あなたがいたら ~18~ 

俺は入学してからまともに通っていない英徳大学へ行った。
目的は勿論講義を受ける為ではない。
昼時なので、目的の人物はカフェテリアにいるだろうと思い向かってみると、その相手はすぐにみつかった。

好物のフルーツグラタンなんてまずそうなもんを、満足げに食べていやがる。
まだ俺に気づかないそいつの元へズンズンと進み、空いている隣の席へ腰かけた。

チラリと俺に視線を走らせると、一瞥したのみで顔いろ一つ変えずに黙々と食べ続けている。

ダチが来たってのにその態度はなんなんだよ。まぁ、こいつは昔からこうだ。
早く済ませようと用件を伝えた。


「類、あのおかっぱ女の番号教えろよ?」

俺の問いかけに、今度は目を見開いて驚きの表情を露わに俺をジッと見つめてきた。

「何急に!?司、もしかして何か思いだした!?」

なんでそんな、類が驚くんだよ?

司はこの時類の驚いた顔に意表を突かれ、類がなぜ思いだしたかを確認した事が、おかっぱ女という言葉からきているとは考えが及ばなかった。

「いや。ちげーよ。
クックックック…あのお…」

続きを言いかけたところで、後ろから総二郎とあきらが現れ話の腰を折られた格好となった。

「おい、司!お最近お盛んなんだって?」

そう言いながら二人も空いている席に腰かけた。

どう見ても興味本位の茶化す態度で現れた二人。

「しっかしおまえ、手出しすぎなんじゃねぇか?」

「おまえらに言われたくねぇよ。」

「俺を総二郎と一緒にすんな!俺は一途なんだよ。」

総二郎と一緒にはされたくないと、不倫なんて行為をしているにも関わらず、昔からあきらは一途を強調してくる男だ。

「俺だって最近の司ほどじゃねぇぞ。」

総二郎の発言を聞いた途端、それまで黙って顔いろ一つ変えずに聞いていた類が俺を真っすぐ見捕らえ口を開いた。

「司、知らない女と気持ち悪くないの?」

その声は冷気を帯びた冷たい口調だった。

「あぁ!?」

そして、顔いろ一つ変えていないと思っていたが、その目からははっきりとした怒りが感じられた。こんな怒った類、初めて見た。…いや、…病院でだ。
あの時もわけわかんねぇ事言って俺を殴ろうとしやがったよな。
そうだった、俺はあの時類を庇ったあのおかっぱ女を殴ったんだった。
なんだろうな、悪い事したなんて思ってねえし、むしろあいつが勝手に間に立ちはだかったんだから俺は悪くない。なのに、なんでこんなイラつくんだよ…。

「ちょっと前までの司は知らない女に触れるなんて気持ち悪がってたろ?」

確かにな…。あの快感を知る前の俺はそうだった。

「…」

この場の空気が凍り付いたのを察知したんだろうお祭りコンビは、又いつもの様に揶揄うような口調で話し始めた。

「まぁ、司も漸く男になったって事だろ?」

「あぁ、はっきり言って遅すぎたくらいだろ?
ところで、初めてはどうだったんだよ?」

「そうだ、せっかくずっと守ってきた童貞をおまえが捧げたのはどこのだれだよ!?」

別に守ってたわけじゃねえ。ヤル気がなかっただけだっつーの。
てか、こいつらにまだ言ってなかったか。
俺はどんな反応をするのかが楽しみになった。

特に、類のな。

「んぁ!?名前なんて知らねえな。ックックック…俺よりおまえらのが知ってんだろ?」

………?お祭りコンビは顔を見合わせ、アイコンタクト交わした。

クックックック…

「俺らが知ってるって一体誰だよ?」

答えを気にするお祭りコンビを他所に、司は類の薄茶の瞳をじーっと見つめると、ニヤリと薄ら笑いを浮かべてその人物を告げた。


「類の女」


その瞬間、3人が明らかに衝撃を受けただろう事がよくわかった。表情から笑みが一切消え、真顔に変わったから。


「「「…まさか!!!」」」

俺はこいつらが驚いたのがおかしかった。
しっかし笑うとかするとか思ったがなんだよ真顔になるって…。

司はこの時3人がどんな気持ちかも気づかずに、言葉を繋げた。
その言葉が更に3人の怒りに油を注ぐ事になるとは露ほども思わずに…。

「あのおかっぱ女、性懲りもなくうちの邸に来やがったからな…ックックック
どうせ類だけじゃなくおまえらも仕込んだんだろ?
あいつあんな貧弱な身体してるくせしてうめぇんだな。クックックック…」


俯いていた類は顔を上げると生意気にも又俺を睨みつけてきやがった。

「まさか…おまえ無理やりやったのか!?」

なにさっきからマジに怒ってんだよ?
相手はただの庶民だろ?俺様の初めての相手になれたんだ、それだけで末代までの名誉にきまってっだろ?大体おまえらもやってる事だろ?

「それがどうした?
あいつ処女じゃねぇくせしてもったいぶりやがって、散々抵抗したけどな…スゲー気持ちよかったぞ。
あいつ俺のセフレにしてやっから番号教えろよ。
いいか、俺が飽きるまでおまえらは手出すんじゃねぇぞ。」

この俺様があんな庶民の女を指名してやってんだ。あの時は嫌がってたが、貧乏人には出来ない贅沢の限りをさせてやったらあいつも喜んで股をひろげっだろ。エステに一流ブランドの服着せてアクセをつけて、うまいもんでも食わせてやりゃあ…むふふふふ…
俺はこの後類から番号をゲットして、今夜の事を妄想して浮かれていた。

そんな俺は激しい頬への打撃で我に返った。

「牧野はそんな女じゃない!」

類に殴られた痛みは勿論、殴られた事実にショックを禁じ得なかった。

「あいつは俺らの大切なダチだ!」

呆然としていると更に総二郎にまで殴られた。なぜ殴られたのか理解できず、反撃しようと立ち上がろうとしたところを、今度はあきらにまで思い切り殴られ、防御がとれなかった俺はみたび吹き飛ばされた。


類と総二郎同様、あきらもすげー怒ってる。思えばあきらがきれるのも珍しい事だ。

「今のおまえに言うだけ無駄だろうがな、あいつはおまえが心底惚れた女だぞ。」

「フン。おまえらとち狂ったのか!?あんな貧乏女に入れ込みやがって!!」

そうは言っても、自分自身が一番入れ込んでる自覚がある。

3人はその後振り返る事無く去って行った。


この時道明寺所有の自家用ジェットが東京へ向かって飛行していた。

怒りに満ちたあの方を乗せて…。

そんな事とは知らない俺は、あいつらから受けた仕打ちの怒りと、あのおかっぱ女の情報を得られなかったイライラからある番号へ電話をかけた。それも何度も何度も…

数時間後、電話をかけた依頼先の人間達がメイプルの滞在している部屋をノックした。

トントントン!


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