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アセビ ~1~ 

その日、ある一人の女性が実家に里帰りをしていた。
おしどり夫婦として有名だった祖父母は、いつも一緒だった。
それが、祖父の他界により、一人残されてしまった祖母の話し相手をするためだ。

祖母は社交的で人当たりも良く友人たちも多くて常に笑いの絶えない人だった。
表向きは祖父が亡くなった後も、そうして寂しさを紛らわせるかのように笑っていた。
しかし、みんな知っていた。
祖母が人知れず泣いていることを…
祖父に逢いたがっていることを…

だから、少しでも悲しみが癒えるようにと進んでみんな祖母に会いにいったのだ。

そして、私もその中の一人。


今日もいつもと変わらず祖母の部屋を訪れると、祖母はお気に入りのロッキングチェアに腰を落としていた。しかし、良く見ると一冊の古びた本を抱きしめながら眠っていたのだ。そして、頬にはまだ乾いていない涙が光っていた。

どうしたんだろう?
そんな祖母を心配していると、人の気配に気が付いたのか、祖母がゆっくりと瞼を開いた。

「どうしたんですか?おばあ様」

ゆっくりと私の方へと振り返ると、祖母は涙を指の腹で拭って微笑んだ。

「ちょっと、昔話を思い出してしまってね…」

そう言って差し出されてのは、おばあ様が抱きしめていた古びた本。

“アセビ”

確かこの東の角部屋の真下に植えられている白とピンクの二本の木もそんな名前だったような……これが何だというのかしら?

孫の怪訝そうに悩む表情を見やって、祖母はその本を彼女に手渡した。

「読んでみて。」

「これをですか?」

「そう…これは昔々道明寺家にいたある夫婦の物語よ。」

気が進まないまま、でも祖母の申し出を断る勇気もなくてその本を受け取って帰宅した。

そして、何の気なしに寝る前に思い出してページを捲った。


*******


“プロローグ”


この花にはいくつかの花言葉がある

美しい見た目から『清純な心』

春に咲く事から『二人で旅に出よう』



美しいものには虫が寄り付く

しかし 他の花は虫食いがあるのに

この花はきれいなまま

何も寄せ付けない

なぜならこの花には毒があるから

毒で己を守る『危険』な花


しかし この花の花言葉には毒とは似つかわしくない言葉もある

この花はジャパニーズアンドロメダとも呼ばれている

その名の由来は神話からくる

ある国に とても美しいアンドロメダという姫がいた

娘は神よりも美しいと吹聴した姫の母

それに怒った神々が化け物をその国に差し向けたのだ

アンドロメダは国を守るために生け贄となった

それを助けたのが英雄ペルセウス

そして二人は恋に落ちて夫婦となった

アンドロメダの『犠牲』の心とペルセウスの彼女を守りたいという『献身』の心


愛する人のためなら自分が犠牲になる事を選ぶ
愛する人のためなら身を捧げてあなたをまもる

そんな想いが二人を結び付けたのかもしれない

二人でならどんな事も乗り越えられる

二人でならいつまでも幸せでいられると……


そして、ここ日本にも同じように結びついた一組の夫婦がいる。

男は誰よりも繊細で純粋な心を持っていた。そして、そんな自分を守るために毒を放っていた。

女は誰よりも美しい心を持っていた。そんな彼女を自慢に思う母によって、彼女は味あわなくてもいい煮え湯を幾度となく飲まされ続けてきたのだ。
しかし、そんな踏まれても踏まれても立ち上がり、逆境に立ち向かう彼女に男は一目で恋に落ちたのだ。

二人は夫婦となった。

ペルセウスとアンドロメダのように、どんなことも乗り越えて行けると

これからも続くだろう幸せと永遠を信じて…

二人は旅に出た。







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