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私事ですが…… 

お久しぶりです。

『Mint』いかがでしたでしょうか?
読者の皆様は現在途中でストップしているお話の方が続きが気になって楽しみにして下さっていると十分わかっているのですが、現状長編を妄想して構成して行く事が困難な状況です。というのも何度か挑戦しましたが、満足いくように書けませんでした。中途半端に完結させたくないので、まずはリハビリとして、一話完結の『Mint』を更新してみました。
まだの方は、よかったら読んでみて下さい。
年末に病気疑惑がありました。それは幸い検査結果から異常がなく終わっており、それでも家族との時間を大切にしたいと報告させて頂いておりましたが、年明けに新たな異変がありました。妊娠が判明したんです。
つわりで妄想する気持ちにもなれず、安定期に入ってからは、お話を構成する感覚が鈍くなったのと、ホルモンの影響でしょうか?以前は大好物だったようなお話に胸焼けを覚えるようになったりして、思うように妄想出来なくなっています。
最近は花のち晴れを見て、少しずつモチベーションが上がりはじめておりますので、気長にこんな私を見守って頂けたら幸いです。

定期的に更新していないので、私的な報告をする必要もないかな。っと思っていたのですが、かえって心配をかけてしまっているようですし、毎日のようにブログを覗いて下さっている方々、たまにコメント下さる方々、拍手ポチをして下さった方々……ブログをやめずにいるのもそうした温かいお気持ちのおかげであり、感謝でいっぱいです。
昨年、1日限定公開した『王子様は旦那様』というお話があるのですが、これは『本当に欲しいプレゼントは』のスピンオフになります。又読みたい。読み損ねた。などいくつかコメント頂いていたので鍵を外す事にしました。つかつくメインのお話ではありませんが、よかったら読んでみて下さい。

きぃより*。




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Mint (完) 


とある日曜日の昼下がり、桜子と滋はつくしと待ち合わせをする為、お茶を楽しんでいた。



「滋さん、道明寺さんを植物に例えるとしたらなんだと思います?」

頬杖をつき、探るように上目使いの視線を向けながら、桜子は滋に聞いてみた。

一体滋さんはなんと答えるだろうか?
そして、今自分が思い浮かべている植物がなにかを聞いた時の反応は想像出来ていた。


「植物?……ん……真っ赤なバラとかかな。やっぱり花と言ったらバラじゃない?司って王様然としてるしさ、それにほら!あいつってば、つくしにプロポーズするって言って部屋中バラづくしにしたって事あったじゃん!!」

「クスッ……そういえば、そんな事もありましたね。」

二人はその現場を見る事は出来なかったが、つくしのアパートから引き取られたという、ゆうに1000本は越えているだろう大量のバラを目の当たりにして、こんなにも愛されているつくしを羨ましいと思いつつも、つくしの住むアパートの部屋を思い浮かべれば、あまりのミスマッチさと、そこに立ち尽くしているつくしと弟の進のひきつっている表情が目に浮かび、笑わずにはいられなかった。

「つくしは花より団子だからね。」

「クスクスッ……花より団子は滋さんもですけれどね。」

「ハハッ確かに。」



ふたりは思いだし笑いを終えると、話の続きに戻った。

「確かにあのルックスとハイスペックを持ち合わせてらっしゃる道明寺さんと言ったら深紅のバラとも言えますわね。
ただ尤もそれは道明寺さんだけではなくて、F4の皆さんにも言える事じゃありません?」

「確かに司だけじゃなくて総くんもあきら君も類君も似合ってるよねぇ~。
じゃあさ、桜子はなんだと思う?」

「わたくしはミントだと思いますわ。」

「ミントォ!?」

「えぇ。」

「 ミントって……それだよ。」

そう言いながら、滋は目を丸くして今桜子が飲んでいるミントウォーターのグラスに入っているミントを指差した。

桜子は予想通りの滋の反応にほくそ笑んだ。

「えぇ。」

「いやいや桜子、それ葉っぱだよ。司って言ったらさ、もっとこう華やかでエグゼな男だよ。あんたもさっき深紅のバラとか言ってたじゃん。」

「それは外見の話ですよね。わたくしは内面の事を言ってるんです。」

「内面?」

考え込んだ表情を浮かべ、今度は滋が頬杖をついている。

「以前の道明寺さんて、本当にクールだったんですよ。まさにミントのようで、あの冷たい瞳にみつめられたいと多くの女性が望んでいたんですから。……でもまぁ、実際に目があったりしてたら震え上がってた可能性が高いとは思いますけど。クスッ……それに、冷たい態度すらも又あのルックスと相まって、ミステリアスで最高だったんですよ。まぁ、わたくしもそんな道明寺さんが好きだったんですけどね。」

「あんたってさ、Sかと思ってたけど実はドMなの?」

「モォ!女は好きになった相手で変わるんですよ。」

「フーン……そんなものかな?
冷たい態度の司って、つくしが漁村に行っちゃった時みたいな感じでしょ?」

「えぇ。」

「それなら私は無理だなぁ。あの時の司ってば、こーんな目して怖かったもん。」

「……。」

滋は左右の目尻を引っ張り、滋の渾身の司の真似をして見せた。しかし、その似ても似つかぬモノマネは、当たり前のように桜子にはスルーされてしまった。


「わたくしも先輩に恋をされた道明寺さんを見て、以前はただスースーしてるだけのミントだったんだとわかったんです。それが先輩に会って恋をして、今の道明寺さんは……」

「今の司は?モォ!勿体ぶんないでよ!」

「クスッ……今の道明寺さんは極上のチョコレートとのマリアージュで、チョコミントみたいじゃないですか?」

「あぁ!たまに素直じゃないところとか、チョコミントの甘いのにスースーするどっちなんだよって感じに似てるかもッ!」

「けどそこがチョコミントの魅力なんですよね。」

「確かにつくしに関わる時だけ甘い表情浮かべちゃうもんね。」

「えぇ。だから今はあの激甘な瞳を見た女性は誰もが自分にも向けて欲しいと思ってしまいますけど」

「つくしだけになんだよねぇ。」

「そうなんです。全く罪作りな方ですよ。」

「そうそう!私もつくしを好きな司を好きになった一人だもん!!」

「ぁああー!もぅお酒頼んじゃわない?」

「えぇ!」




そして、間もなく二人が頼んだカクテルが運ばれてくると、直後につくしが店内に入ってきた。

「お待たせぇ!」

「つくしの分も頼んどいたから。」

「え~?なになに?」

「もちろん先輩のお好きなものですよ。」

「ん……なんだろ?」

そして、タイミングを見計らってつくしの前に置かれた1ピースのケーキを見て、つくしの大きな瞳はキラキラと輝きを増した。


「チョコミントケーキだぁ♪」

一口それを口に含むとニンマリと満面の笑みとなり、そして又一口、二口と頬張り、モグモグと満足気な表情を浮かべながら食べるつくしを眺めながら、二人はカクテルを味わった。



「ところでさ、今日ミントの日かなんかなの?」

「「ん?」」

「二人が飲んでるのってモヒートでしょ。あたしはチョコミントケーキだし、ミントづくしだからさ。」

「フフッ」「ハハッ」

なぜ笑っているのかわからないつくしは、小首を傾げキョトンと二人の様子を眺めつつ、ケーキを食べ続けた。

「先輩は、道明寺さんにモヒートご馳走になったりするんですか?」

桜子が身を乗り出し、つくしにはかせるぞ!と意気込みながら聞いてみる。しかし、答えは予想外にすんなりと出された。

「うん。何度かね。」

おくめもなくケロッと認めた事から、つくしがモヒートのカクテル言葉を知らないのだろう事が察せられた。
それでも、やはり司はモヒートを……。二人の予想は的中し、それだけでおなかいっぱいになった。


「モゥさ!なんだかあてられっぱなしだよね!」

「えぇ、ミントの日じゃありませんが」

そう言うと、桜子は軽くグラスを持ち上げ、滋も又グラスを持ち上げた。

「「ミントに乾杯!!」」


モヒートのカクテル言葉は『心の渇きを癒して』








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おとぎ話 ~2~ 

~30年後~

17歳になったツクシーヌはこのお城に勤め始め二年目を迎えていました。
元来の勤勉で実直な性格から、丁寧でありながら素早い仕事ぶりは定評で、誰にでも優しく親切な事からもみんなから好かれ可愛がられていました。

そんなある日、ツクシーヌは初めてツカサヌス王子の眠る部屋の清掃を任されました。
通常この部屋は使用人頭のタマンが任されているのですが、ぎっくり腰となり、急遽代役が回ってきたのです。

「いいかい、ツカサヌス王子の1m以内には決して近づいてはいけないよ。」

「はい!」

部屋に入る前に、ちゃんと忠告を受けていました。
しかし、なぜ1m以内に近づいてはいけないのかの説明をタマンは伝えていなかったのです。昔から仕える使用人にはその理由は有名な話で、それどころか国中が知っていました。しかし、それは30年余り昔の話。やがて時が経つにつれて王子に逢いに来る者もいなくなり、比例するように噂話をする者もいなくなっていきました。その為年若いツクシーヌ世代はその噂すら聞いた事がなかったのです。

部屋に入ってツクシーヌはベッドに眠る初めて見るツカサヌス王子の人間離れした人形のように美しいその姿に吸い込まれるように目を奪われてしまいました。
48歳と、王子と呼ぶにはとうが経っているような実年齢でありながら、30年にも及ぶ長期に渡り眠らされている王子の姿は、どうみても18~20歳そこそこにしか見えません。

ツクシーヌの意志に反し、一目見たその瞬間から抗おうにも抗えない、強力な磁石のようなものでツカサヌス王子の元に引き寄せられました。

ダメ!

ダメ!ダメ!!

ダメだよー!!

ベッドを目前にして、王子にドンドン近づく事にツクシーヌは怖くて目を閉じてしまいました。

ボフンッ!!


一体…何が起きたの?

ツクシーヌは恐る恐る閉じていた瞼を開けました。、長い睫毛に縁どられたアーモンドアイの青年と目があったのです。それも、これまで経験した事のない超が付く至近距離!そして、これまた感じた事のない感触をつくしの唇は感じていました。生暖かくふっくらとしたものに重なっていたのです。……それが何なのか理解すると、サーッと血の気が引いていくのがわかりました。
慌てて身を起こした正にその瞬間、背後から絶対零度の鋭い視線ににらまれているのが分かりました。

「何をしている!?」

急いでベッドから撥ね退けるように降り、ツクシーヌが振り返ると、そこに立っていたのは鬼の形相をしたこの城の城主であり、女王カエデンその人でした。

初めて間近で見る女王の迫力に、ツクシーヌは立っているのがやっとな程に狼狽しました。

してしまった事…イヤイヤ、決してこんな事自分の意志でやったつもりはなく、本当に身体が勝手に吸い寄せられたのです。
普段の自分ならこんな愚かな事、決してしないし、身体が勝手に動いた。だがそんないいわけを誰が信じてくれるだろうか。

ガタガタと小刻みに震えるツクシーヌにしびれを切らせたカエデンは、背後の警備兵に向かい顎でしゃくり合図を送りました。すぐさま警備兵二人がツクシーヌに歩み寄ると、両腕をがっしりと掴みあげました。そのまま何も発さず、ツクシーヌは黙って警備兵に従い連行されて地下牢に投獄されてしまいました。

これから自分はどんな罰を受けるのだろう…
事もあろうに仕える身でありながら、眠っている王子の寝込みを襲い、大切な唇を奪ってしまったのだ。
場合によっては死罪もありうるかもしれない。
家族や同僚にまで罰が及ばなければ良いのだけれど…

そういえば、ツカサヌス王子と目があったような気がしたけれど、…気のせいだったのかな。



*****
カエデン女王は、人払いをするとツカサヌス王子の元に歩み寄りました。
もしやバリアーが解けたのかもしれないという期待とともに…
しかし、かわらず強固なバリアーはツカサヌスに近づく事を許してくれません。

ではなぜあのメイドは…
あり得ない。あり得てたまるか。あんなピラミッドの最下級に属するメイドが頂点に立つ王族の司の運命の相手でなどあるわけがないではないか。

現に、ツカサヌス王子はキスをされたというのに目覚めてはいないのです。
しかし、これまで数えきれない女性達がツカサヌス王子に張られているバリアーの前に玉砕していった中、初めてバリアーの向こうに行き、ツカサヌス王子に触れる事が出来たのです。

その瞬間、ツクシーヌへの沙汰が決まりました。

『ツクシーヌ・マキーノ 島流しの刑に処する』
通常罪人は、広場に刑が貼りだされるのですが、今回は事が露呈しないよう隠密にその日の内に刑が執行されました。

誰にも見られないよう荷馬車に乗せられ、途中馬に乗り換え森を抜け、どこまでもどこまでも進むと、そこには海が広がっていました。

警備兵二人に連れられて、渡し守のせんどうする小さな木造船に乗せられてツクシーヌ達は出航しました。
浜辺から見えた一番近い大きな島だと思っていたツクシーヌの予想はあっさりと外れ、その島を通り過ぎると更に島が見えてきました。しかしその島でもなく、更に次の島でもなく、何島も通りすぎて、ツクシーヌが降ろされたのは国の最果ての地である薄気味悪い小さな無人島でした。

こんな場所に女一人を置いて去る事に警備兵達も後ろ髪引かれる想いでした。果たしてこんな所で生き残れるのだろうか……。だから、本来ならしてはいけない事だとわかっているのに、タマンからどうしてもと懇願されて預かった荷物をツクシーヌに持たせてあげる事にしました。そして、煙草を嗜む為に持ち歩いているマッチをポケットから取り出すと、ツクシーヌの手に握らせました。

かけてあげる言葉が二人には見つかりませんでした。
罪人なのだから容赦なく接して構わないはずなのに、あの現場を目撃していた二人は本当にこの刑を執行してしまってよかったのかという迷いがありました。そもそも本当に罪なのか?金持ちの令嬢ならWelcomeなのに、庶民だからといって…

「死ぬんじゃないぞ。」
「何があっても生きろ。」

きっと……長くは持たない。
それでもこれが二人の本心であり、願い。


目を合わせようとはせず、そそくさと再び船に乗り込んで行く警備兵に向かって、つくしは深々と頭を下げ続けました。そして、船が小さくなると、声の限り大きな声で叫びました。

「あたしは絶対に死なない!絶対生き残ってみせるんだから!!」




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おとぎ話 ~1~ 

このお話はタイトル通りおとぎ話になっております。まんまなタイトルですよね(;^ω^)
その為、登場人物の名前も若干変えてありますので違和感を感じる方、ネーミングセンス等色々と思うところがあるかもしれませんが、ファンタジーですので明るくご容赦下さい。

司=ツカサヌス
つくし=ツクシーヌ
楓=カエデン
椿=ツバキーユ
タマ=タマン



*****
昔々、ここ日本から遥か遠い遠いとある国をドー・ミョージ一族がおさめておりました。
女王のカエデンは冷酷で冷たい冷笑しか浮かべないので、鉄の女王と呼ばれ民衆を震え上がらせる恐怖政治の元に従えさせていました。

ツバキーユ姫はその姿を一目見た者は誰もが感嘆するという程の美貌の持ち主でありながら、豪快な性格で、しかし誰にでも優しく接する人柄から民衆の誰からも人気のお姫様でした。
カエデン女王は、姫が産まれた時からどこの国へと嫁がせようかと常々思案しておりました。そして、年を重ねる毎に益々美しくなっていく姫に、縁談の数は引く手あまたでそのどれもが良縁と思える嫁ぎ先でした。
しかし、カエデンの期待と欲望とは裏腹に姫は家臣と恋に落ちました。
取り付く島もない状態で、ツバキーユが駆け落ちをしようと企んでいる事を知ると、家臣を死罪にしたくないならばと隣国のホテール王子との婚姻を迫りました。
姫は泣く泣く恋人を救う為にホテール王子の元に嫁ぎました。


カエデン女王には、王子もいました。その王子も又、誰もが見惚れる彫刻のような美しい造形美を持つ青年でしたが、ツバキーユ姫とは違い民から恐れられる存在でした。我儘放題の俺様で、カエデンさえももて余す問題児なのです。


ある日所用の帰り道、カエデン女王とツカサヌス王子を乗せた馬車が森の中を通過している時の事、急に馬車は止まりました。なかなか出発しない事に腹を立てたツカサヌス王子は何事かと窓を開けると、怪しげなローブを纏った老婆が道に倒れており、馬車の運転手がその老婆を抱き起そうとしているところでした。
救助しようとしている家臣にむかって苛立ちを隠そうともせず叫びました。

「何してやがんだ!そんなん放っとけ!」

「しかし、倒れている民を放っては……」

すると窓から長い腕が伸びてきて、運転手の胸倉をぐっと掴むと締め上げたのです。

「てめぇ誰に口答えしてんだ?この俺様が放っとけってんだ。大体どうするつもりだ?まさかあんなきったねぇババアをこの馬車に乗せるとでも言うのか?」

ものすごい力で締め上げられ、息が苦しく感じる中、どうすればいいのかと迷った馬車の運転手はカエデンに助けを乞うため視線を向けました。しかし、ピクリとも表情を変えずに放った一言に、運転手は期待した自分が愚かだったと思い知りました。

「早く出せ。」

そうだった。常に冷徹非道な女王が人助けなどするわけがない…。
そして、カエデンの言葉を合図のように、ツカサヌスは締め上げていた手を緩め、勢いよく運転手は地面に転げました。
家臣はそれ以上何も言えなかった。これ以上一言でも発したならば自らの身が危ないと感じたからです。

家臣は老婆にすまないとカエデン女王とツカサヌス王子に聞こえないよう小さく呟くと踵を返し、後ろ髪をひかれながらも馬車の手綱を掴みました。

再び走りだしたその馬車を、老婆は唸りながら見つめました。

その唸り声も、老婆の怨みも二人に聞こえる事も伝わる事ももちろんこの時はありませんでした。
しかし、二人はその怨念の深さを直ぐに思い知る事になるのです。

そう、怨みというのはことのほか深いのである。



*****
その夜、カエデン女王がベッドに入ろうとしている時、突如としてビューッと風が入り込んだ。きちんと戸締まりしているはずだというのにランプの灯りが激しく揺らめき、その異様な光景にカエデンが部屋の外で待機している警備兵を呼ぼうとしたその時、彼女の目の前に昼間見た薄汚れたローブを纏った老婆が現れました。

「一体ここへどうやって入ったのだ。」

「ヒッ…ヒッヒッヒッヒ…どうやってだと?そんなの簡単じゃ。…魔法」

魔法だと?たわけた事を。そう思うのに、先程から感じるこの老婆の薄気味悪さと自分に対する憎悪に満ちたオーラを感じ、これまで感じた事のない身震いのような震えを我知らず感じていました。

「警備兵!警備兵!」

バタン!バタン!

警備兵が開けようとした部屋の扉はすぐさま勢いよく閉じられ、ドンドンと扉をこじ開けようとしているのだろうドアに体当たりしているのだろう音だけが室内に響いてきました。

「何をした?」

「言っただろ?魔法だ。
お主とお主の息子が昼間した仕打ち。よもや忘れたとは言わぬな?
何が女王じゃ。何が王子だ。てんで呆れるわ。」

「…あの時のか。」

「女王よ、お主が一番大切な物はなんだ?地位か?金か?家族か?」

「……。」

「この国は代々ドーミョージが一族治めとるな。今後もおまえの愚息が子をなして継いで行く。ヒッヒッヒッヒ…そう思うとるじゃろ?…じゃがそれももうしまいじゃ。民を人とも思わず踏みにじり大切に出来ぬお主達一族が治める国など先が見えておる!」

途絶えさせる?…まさか!

「クックック…安心しろ。わしは人殺しはしたりせん。じゃからお主や王子の命を奪ったりはせんよ。その代わり…ヒッヒッヒッヒ…」

怪しく笑うと老婆は両手を高らかに上げて、右手に持っていた杖を振りかざしました。

「アブラカタブラブッタッタ…エィ!」

怪しげな呪文とともに杖から閃光がほとばしると、それは空中で弾けました。

「ヒヒッこれでお主達が心を入れ替えぬ限り跡継ぎが産まれる事はないじゃろう。」

先程までと身体になんら異常を感じないカエデンは一体何の呪文だったのか気になりました。

「一体何をしたというのだ!?」

「ワシは王子に永遠の眠りの呪いをかけた。それが解けるのはただ一人運命の相手じゃ。運命の相手とのキス。それで王子は目覚めるじゃろう。そして、その相手はこの国を導いてくれるじゃろう。
よいか、お主が認めたらいいだけの事じゃ。」

「ヒッヒッヒッヒッヒッ……」

魔女は薄気味悪い笑いをしながら、突如として現れた竜巻に包まれ去ってしまいました。

老婆が去った直後、魔法が解けたカエデンの部屋には雪崩のように警備兵達がなだれ込んできましたが、既に老婆は立ち去った後で特段脅威があったようにも思えない室内の様子に警備兵達は困惑していました。
そんな中、カエデンだけはこれまで感じた事がない不安という感情に押しつぶされそうになっていました。

そんな呪いがあるわけない。そう思うのに払拭出来ない。
カエデンはツカサヌスの事が心配になり、未だ困惑している警備兵達を伴いツカサヌスの部屋を訪れると、そこには既に床について熟睡しているツカサヌスがいました。
穏やかな表情で眠る息子の様子に一瞬安堵しかけるも、老婆の言っていた『永遠の眠り』という言葉が脳裏に浮かび、カエデンはツカサヌスを起こそうと彼の枕元へ歩み寄ろうとしてあと1mというところで、まるでバリアーでも張られているかのようにビリビリと身体に電流が走りそれ以上近寄る事が出来なくなってしまいました。
その様子を見ていた警備兵達も近づこうと試みましたが、みんなビリビリと電流に阻まれ誰も近づく事が出来ません。

「なんという事なの…こんな魔法があるなんて」

カエデン女王は翌日から老婆を探し出すべく国中に老婆の手配書を配り広く情報を求め、徹底的に森の捜索も始めました。
大規模な捜索をしても老婆の姿は一向に見つからず、激怒したカエデンは森に火を放つよう命じました。
家臣はみなそれがいい考えだとは思いませんでしたが、かといって誰一人NOと言える者もおらず、あれほど木々が生い茂り、小鳥たちが囀り、季節ごとに咲き乱れる花たちであれほど豊かな森だったというのに、無残にもそこは焼け落ちて灰野原と化してしまいました。

更に、女王は翌日から国中の貴族の娘達を集め、ツカサヌス王子のバリアーを突破できる者を探し始めました。
しかし、国内の娘達は誰一人として突破できる者がおりませんでした。そして、隣国、更に隣国へとその話は広まっていき、眠れる美しい王子と運命の相手になろうとする多くの有力者の娘達が司の元を訪れ始めました。

果たしてツカサヌス王子の運命の相手はみつかるのでしょうか?




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あなたがいたら ~25~ 

※第25話はつくしの出産のお話になりますが、アメリカの出産事情がよくわからないので、ご存知の方にとっては違和感等があるかもしれませんが、そこは素人の拙いお話と目をつむって頂けたら幸いです。



*****

12月28日、つくしは18歳の誕生日を迎えた。
牧野家は勿論の事、尊、楓、そしてニューヨークのお邸の使用人達に祝福され、豪華ではなくアットホームな心温まる日となった。

この時既に臨月に入っており、つくしはいつ出産してもおかしくない状況にいた。
そして、その時はやってきた。

1月6日の昼食を食べ終えると、腹部に痛みが走った。直ぐに痛みが引き、最初は勘違いかと思ったそれはやがて20分、15分と感覚が短くなり、10分間隔で痛みに襲われ、つくしは心配する母に背中を撫でられ、オロオロする父の手をぎゅーっと握りしめて病院へ向かった。
つくしが分娩予定の産院は、セレブが出産する事で有名な超が付くラグジュアリーホスピタルで、腕は勿論、セキュリティにも万全が期されている。食事も☆が付く名店で総料理長をしていたコックが腕を振るっている為、舌の肥えたセレブにも大評判だ。アメニティもメイプルをはじめとする一流ホテル同様の物が使われている。
陣痛・分娩・回復までを移動することなく一室で済ませる事が出来、又完全個室の為リラックスして出産出来るLDR室で出産する事が出来る。


陣痛は10時間以上に及び、日を跨いで7日になった頃、破水し、子宮口は全開となった。
いよいよと周りにも緊張が走り、つくしの疲れも痛みもピークに達していた。

「ベイビーが出ます」

その声につくしはなけなしの力で思い切りいきんだ。

「んんんんぅうう」

なんとも言葉にならないいきみ声をあげながら、自分の膣内から一気に滑り落ちるように取り上げられた我が子。

確かに分娩したはずなのに、聞こえるはずの産声が聞こえない。

ハアーハアーハァーと、つくしは息を荒げて正面を向くと、丁度診察台に載せられるところだった。

えっ?

数名のスタッフが慌てて機材を運んできて、産まれたばかりの我が子に処置が行われている。

今目の前で起きている光景が理解できない

どういう事!?

ぐったりとしていて、力なくうつろな目だけが、まだ見えていないはずだというのに、まるで母親を探すようにこちらを見つめているようだった。その姿は痛々しく、弱々しくて、初めてみる我が子の姿につくしは涙が溢れてきた。

医師や看護師達の声など周りの雑音は聞こえない。

時間の感覚もわからなくなる。

つくしはわが子が医師と看護師によって処置されているその光景を前に、我が子の目をジッとみつめ祈る事だけしか出来なかった。

ごめんね。ごめんね。

お願い…早く声を聞かせて


神様、お願いです…あたしからこの子まで奪わないで…


一体どれくらいの時間だったのだろう。
つくしの祈りが通じたのか、我が子は突如むせこみ始め、直後、漸く産声を上げた。
初めて聞くその声は、つくしがドラマや映画からイメージしていた張り裂けんばかりのオギャーというものではなく、本当に小さな小さな声でオギャッと産声を上げた。

小さくても、それは確かに我が子の初めての生まれたのだという自己主張であり、つくしは漸く安堵し、ずっと堪えていた涙が頬を伝った。



生まれてきてくれてありがとう。あたしの赤ちゃん



ねぇ…あんたパパになったんだよ…道明寺







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